急性期病院の看護師ってどんな働き方?慢性期・回復期との違いも解説
看護師として働く場所は多岐にわたりますが、中でも「急性期病院」は、テレビドラマなどでもよく目にする、まさに医療の最前線とも言える場所です。常に患者さんの命と向き合い、高度な医療が提供される急性期病院での看護は、多忙なイメージがある一方で、「看護師として成長できる」という声も多く聞かれます。
しかし、実際の急性期病院での働き方や、他の病院(慢性期・回復期)との具体的な違いについて、詳しく知っている方は少ないかもしれません。「自分に合った働き方なのかな?」「どんなスキルが身につくんだろう?」と、興味と同時に不安を感じる方もいるでしょう。
この記事では、急性期病院の看護の特徴から、具体的な働き方、そして慢性期・回復期病院との違いまで、分かりやすく丁寧にご紹介します。急性期看護のリアルを知り、あなたのキャリアパスを考えるヒントにしてくださいね。
「急性期病院」ってどんなところ?その役割と特徴
急性期病院とは、病気やケガで突然重篤な状態に陥った患者さんや、緊急性の高い処置や手術が必要な患者さんを受け入れ、集中的に治療を行う医療機関です。救急外来や集中治療室(ICU)、手術室などが充実しており、24時間体制で高度な医療を提供しています。
急性期病院の主な役割
救命医療の提供: 緊急性の高い患者さんに対し、迅速な初期治療と救命処置を行います。
病状の安定化: 重症の患者さんの病状を安定させ、回復の基盤を築きます。
高度医療の実施: 手術や集中治療、専門的な検査など、高度な医療技術を駆使して治療を行います。
急性期を脱した患者さんの送り出し: 病状が安定し、集中的な治療が不要になった患者さんを、回復期病院や慢性期病院、自宅などへとスムーズに移行させる役割も担います。
急性期病院での「看護」の特徴と求められるスキル
急性期病院での看護は、他のフェーズの病院とは異なる多くの特徴と、高い専門性が求められます。
1. 高い専門性と知識・技術
病態急変への対応: 患者さんの容態が急変することが日常的に起こるため、異常の早期発見と迅速な初期対応、アセスメント能力が非常に重要です。
高度な医療機器の操作: 人工呼吸器やモニター類、点滴ポンプなど、様々な医療機器を操作・管理する知識と技術が必要です。
薬剤に関する知識: 多くの種類の薬剤を使用するため、薬理作用や副作用に関する深い知識が求められます。
2. スピードと正確性
多重業務と優先順位: 複数の患者さんを同時に看たり、緊急性の高い処置が入ったりするため、限られた時間の中で迅速かつ正確に業務をこなし、優先順位を判断する能力が不可欠です。
記録の迅速性: 治療経過や患者さんの状態を正確に、かつタイムリーに記録するスキルも重要です。
3. 幅広い疾患・患者層への対応
様々な病気やケガの患者さんが運ばれてくるため、幅広い疾患に関する知識と、あらゆる年代の患者さんに対応できる柔軟性が求められます。
4. チーム医療の中核
医師、薬剤師、理学療法士、管理栄養士など、多職種連携が必須です。看護師は患者さんの最も身近にいる存在として、情報共有や調整役としてチーム医療の中核を担います。
5. 精神的なタフさ
命に関わる場面に立ち会うことが多く、精神的な負担も大きくなりがちです。患者さんやご家族への精神的なケアも重要であり、自身のストレス管理も求められます。
急性期病院での「働き方」のリアル
急性期病院での勤務は、以下のような特徴があります。
変則勤務・夜勤: 24時間体制の病院であるため、日勤・夜勤を含むシフト制勤務が基本です。夜勤は体力的な負担が大きいですが、夜勤手当などにより給与は高めになる傾向があります。
残業が多い傾向: 患者さんの急変対応や緊急入院、手術などにより、定時で業務が終わらないことも少なくありません。
高い業務量とプレッシャー: 患者さんの状態が刻々と変化するため、常に高い集中力と判断力が求められ、業務量も多くなりがちです。
教育体制の充実: 新人看護師への教育体制や、継続的なスキルアップのための研修制度が充実している病院が多いです。キャリアアップの機会も豊富です。
慢性期・回復期病院との違いを比較!
看護師の働き方や役割は、病院の機能によって大きく異なります。急性期、慢性期、回復期それぞれの特徴を比較してみましょう。
項目 | 急性期病院 | 回復期病院 | 慢性期病院 |
患者さんの状態 | 重症、容態が不安定、緊急性の高い患者さん | 急性期を脱し、集中的なリハビリが必要な患者さん | 病状が安定し、長期的な療養やケアが必要な患者さん |
主なケア内容 | 救命処置、病状管理、高度な医療処置、緊急対応 | リハビリテーション、ADL(日常生活動作)向上支援、在宅復帰支援 | 日常生活の援助、身体介護、看取り、ターミナルケア |
看護のポイント | 迅速な判断、高度な知識・技術、多重業務対応 | 患者さんの意欲を引き出す、寄り添うケア、情報共有 | きめ細やかな個別ケア、精神的なサポート、ご家族との連携 |
看護師に求められるスキル | 高度なアセスメント力、急変対応力、専門知識 | リハビリテーション知識、コミュニケーション力 | 身体介護スキル、観察力、傾聴力、精神的ケア |
勤務形態の傾向 | シフト制(夜勤あり)、残業多め | シフト制(夜勤あり)、残業少なめ〜普通 | シフト制(夜勤あり)、残業少なめ |
給与水準の傾向 | 高め | 中程度 | 低め〜中程度 |
やりがい | 命を救う、病状が回復していく過程を間近で見る、スキルアップ | 患者さんの回復をサポート、在宅復帰を支援する | 患者さんの生活を支える、寄り添う、人生の終末期を支える |
あなたに合うのはどの働き方?
それぞれの病院機能には、異なるやりがいと大変さがあります。
急性期病院:
向いている人: 忙しくても最新の医療に触れたい、高度なスキルを身につけたい、急変対応力を磨きたい、キャリアアップを目指したい、体力に自信がある人。
懸念点: 精神的・肉体的負担が大きい、残業が多い傾向。
回復期病院:
向いている人: 患者さんが回復していく過程に寄り添いたい、リハビリテーションに関心がある、ADL向上を支援したい、患者さんやご家族とのコミュニケーションを重視したい人。
懸念点: 患者さんとの関わりが密な分、精神的負担を感じることも。
慢性期病院:
向いている人: 患者さんの日常生活を支えたい、じっくりと患者さんやご家族と向き合いたい、看取りやターミナルケアに関心がある、ワークライフバランスを重視したい人。
懸念点: 医療処置が少ないため、スキルが停滞すると感じる人もいるかもしれません。
まとめ:看護師としての「やりがい」と「自分らしさ」を見つけよう
急性期病院での看護は、常に高度な知識と技術、そして迅速な判断力が求められる、非常にやりがいのある仕事です。命と向き合う責任の重さはありますが、患者さんの回復を間近で見られる喜びや、看護師として大きく成長できる環境は、急性期ならではの魅力と言えるでしょう。
しかし、その一方で、慢性期や回復期病院には、それぞれのフェーズだからこそ得られる深いやりがいや、異なる働き方があります。
この記事で解説したそれぞれの病院の特徴や働き方を参考に、あなたが看護師としてどのようなキャリアを築きたいのか、どんな環境で「自分らしく」働きたいのかをじっくりと考えてみてください。看護師の仕事は多様です。あなたの個性や目標に合った場所で、最高の看護師として輝けることを願っています。