ヘンダーソンの「基本的欲求」で看護実習記録をもっと分かりやすく!書き方とポイント
看護実習、お疲れ様です!毎日患者さんのケアに奮闘し、記録もたくさん書いていることと思います。中でも、ヘンダーソン看護論の「14の基本的欲求」は、患者さんのアセスメントや看護計画を立てる上で欠かせない視点ですよね。
でも、「14の基本的欲求を使って、どう記録を書けばいいんだろう…」「具体的にどんなことを書けば評価されるのかな?」と悩んでいませんか?教科書を読んでも、いざ自分の言葉で書こうとすると難しいものです。
このブログでは、ヘンダーソンの「14の基本的欲求」を看護実習記録に効果的に落とし込むための書き方を、具体的な例を交えながら分かりやすく解説します。このポイントを押さえれば、あなたの実習記録が格段にレベルアップし、患者さんへの理解も深まるはずです。さあ、一緒に看護記録マスターを目指しましょう!
なぜヘンダーソンの「14の基本的欲求」が実習記録に重要なのか?
ヘンダーソンの「14の基本的欲求」は、看護師が患者さんを**「全人的に」捉え、「その人らしい生活」**を送れるように支援するための基盤となる考え方です。
1.患者さんを多角的にアセスメントできる
体調だけでなく、精神状態、社会的な役割、文化的背景など、患者さんの様々な側面を14の視点から漏れなくアセスメントできます。これにより、患者さんの全体像をより深く理解することに繋がります。
2.個別性を重視した看護計画が立てやすい
「~ができない」という問題だけでなく、「なぜできないのか(原因)」や「どうなればできるのか(目標)」を、それぞれの欲求と関連付けて考えることで、患者さん一人ひとりに合った、より具体的な看護計画を立案できます。
3.看護の視点が明確になる
漠然とケアをするのではなく、「このケアは、どの基本的欲求を満たすために行っているのか」という目的意識を持って看護に取り組めるようになります。記録を通して、あなたの看護観や思考プロセスを明確に示せます。
実習記録の書き方:ヘンダーソンの14の基本的欲求を活かすステップ
実際に記録を書く際の具体的なステップと、それぞれの項目で意識したいポイントを見ていきましょう。
ステップ1:情報収集と観察(客観的情報と主観的情報)
まずは患者さんの情報をできる限り集めます。これがアセスメントの土台となります。
客観的情報(O情報 - Objective data):
患者さんの言動: 「〜と話していた」「〜という表情をしていた」
身体所見: 血圧、体温、脈拍、呼吸数、皮膚の状態、排泄物の量や性状など
検査データ: 血液検査、画像診断の結果など
医療者の記録: 他職種(医師、PT、OT、管理栄養士など)の記録
環境: 病室の様子、家族の面会状況など
主観的情報(S情報 - Subjective data):
患者さんの言葉: 患者さんが直接話したこと、訴え、気持ち「〜が辛い」「〜したい」
患者さんの表情や態度から推測される内面: 「不安そうに見える」「痛みを我慢しているように感じる」
【ポイント】
「14の基本的欲求」の各項目を意識しながら情報を集めると、偏りのない情報収集ができます。例えば、「呼吸する」の欲求であれば呼吸音や呼吸回数だけでなく、「息苦しさを訴えていないか」「呼吸に合わせた表情はどうか」なども観察します。
ステップ2:アセスメント(解釈と分析)
収集した情報を「14の基本的欲求」の視点から解釈・分析し、患者さんの状況と看護の必要性を明らかにします。これが記録の「肝」となる部分です。
各欲求について、「〜ができない(健康問題)」「なぜできないのか(原因・阻害要因)」「どうなればできるようになるのか(望ましい状態)」という視点で掘り下げて考えてみましょう。
【アセスメントで書くべきこと】
各基本的欲求の充足状況の評価:
「〜の欲求が満たされている(充足されている)」
「〜の欲求が満たされていない(不充足である)」
具体的なO情報・S情報を根拠に、満たされているのか、満たされていないのかを明確に記述します。
不充足な欲求の原因分析:
不充足な欲求に対して、なぜそうなっているのか、その原因や阻害要因を具体的に記述します。身体的、精神的、社会的な側面から多角的に分析しましょう。
例:「臥床により体位変換が困難であるため、体動の欲求が満たされていない。」
関連する欲求の関連性:
複数の欲求が相互に関連している場合は、その繋がりを記述すると、より深いアセスメントになります。
例:「痛み(安楽の欲求不充足)により夜間熟眠できず(睡眠と休息の欲求不充足)、日中倦怠感を訴えている(身体を動かす欲求不充足)。」
患者さんの強み・セルフケア能力:
できないことだけでなく、患者さんが自分でできることや、**持っている力(強み)**にも着目します。これを記述することで、患者さんを主体とした看護計画に繋がります。
例:「自己で経口摂取は可能であり、食事の選択意欲もみられるため、食事摂取は自立に向けた支援が可能である。」
看護の必要性・方向性:
この患者さんに対して、どのような看護が必要なのか、今後どう支援していくべきか、あなたの考えを記述します。
【ポイント】
「〜という情報から、〜と考えられる。よって、〜の欲求が不充足である。」という論理的な繋がりを意識して記述しましょう。
抽象的な表現ではなく、具体的なO情報・S情報を根拠に記述することが重要です。
ステップ3:看護問題・看護診断(NANDA-Iなどを参考に)
アセスメントで明らかになった不充足な欲求と、その原因から看護問題を明確にします。NANDA-I看護診断を活用すると、より専門的な視点で問題設定ができます。
例:
安楽の欲求不充足:「急性疼痛:胃部切除術による切開創に関連した」
清潔の欲求不充足:「セルフケア不足:入浴、上肢の関節可動域制限に関連した」
【ポイント】
「患者さんの状態」+「なぜそうなっているのか(関連要因)」の組み合わせで表現すると、看護の方向性が明確になります。
ステップ4:看護目標(短期的目標・長期的目標)
看護問題が解決された、あるいは改善された状態を具体的に設定します。患者さん自身が達成可能で、評価できる内容にしましょう。
長期的目標: 退院時など、比較的長いスパンでの目標。(例:退院までに日常生活行動が自立できる)
短期的目標: 数日〜1週間など、短いスパンで達成可能な目標。(例:○日までに、自分で食事を全量摂取できる)
【ポイント】
目標は「**誰が(患者さん主体で)」「いつまでに」「何を」「どのように」**達成するかを具体的に記述し、評価可能であることが重要です。
ステップ5:看護計画(具体的介入)
目標を達成するために、看護師が具体的に何を行うのかを記述します。観察計画(O-P)、援助計画(A-P)、教育計画(E-P)の視点を取り入れると良いでしょう。
観察計画(O-P:Observation Plan):
問題の解決状況や変化を把握するための観察項目。
例:「疼痛の部位、程度、性状、鎮痛剤使用後の効果を1時間ごとに観察する。」
援助計画(A-P:Assistance Plan):
問題解決のために看護師が行う具体的な援助内容。
例:「患者の体位を2時間ごとに変換し、安楽な体位を保つ。」
例:「食事摂取時は、ベッドギャッジアップを行い、食介時は声かけを行い嚥下状態を確認する。」
教育計画(E-P:Education Plan):
患者さんや家族への情報提供、指導、教育の内容。
例:「疼痛時には、我慢せずナースコールを押すよう説明する。」
例:「退院後の食事内容について、管理栄養士と連携し情報提供する。」
【ポイント】
「なぜその援助を行うのか」がアセスメントと繋がっているかを確認しましょう。具体的な行動や声かけまで落とし込んで記述すると、指導者にも伝わりやすくなります。
ステップ6:記録と評価
看護計画に基づいて実施した内容を記録し、それが目標達成に繋がったか、患者さんの状態に変化があったかを評価します。
実施記録: 計画した介入をいつ、誰が、どのように行ったかを具体的に記述します。患者さんの反応も忘れずに。
例:「〇月〇日 10:00 胃部疼痛を訴えあり。VAS 7/10。医師の指示により鎮痛剤を内服後、30分後にVAS 3/10に軽減。傾眠傾向となる。」
評価: 看護目標が達成できたか、できていない場合はその理由や今後の課題を記述します。
例:「短期的目標:〇月〇日までに、日中の疼痛VAS 3/10以下を維持できる。→達成。鎮痛剤の効果が得られ、痛みがコントロールできているため。」
例:「短期的目標:〇月〇日までに、自分で食事を全量摂取できる。→未達成。食事内容によってはむせ込みがあり、全量摂取は困難であった。今後の課題:食事形態の調整や、嚥下指導の継続が必要である。」
【ポイント】
評価は客観的な情報に基づいて行い、達成・未達成に関わらず、必ずその理由を記述しましょう。
ヘンダーソンの14の基本的欲求:具体例で理解を深めよう!
呼吸する:呼吸状態の観察、呼吸を楽にする体位の調整
飲食する:食事摂取量、嚥下状態の観察、食介、栄養指導
排泄する:排便・排尿コントロール、オムツ交換、排泄環境の整備
身体の活動と臥位を保つ:体位変換、離床援助、リハビリテーションへの参加促し
睡眠と休息をとる:睡眠状況の観察、安楽な環境整備、睡眠導入剤の効果確認
衣類を選び、着脱する:更衣援助、着替えやすい衣類の提案、ADL指導
体温を正常範囲に保つ:体温測定、発熱時のクーリング、保温
身体を清潔に保ち、身だしなみを整える:清拭、入浴介助、口腔ケア、整髪
危険を避け、環境から身を守る:転倒転落予防、感染予防、与薬管理、与薬時の説明
意思を伝え、情動、欲求、恐怖、意見を表現する:コミュニケーション援助、傾聴、不安の軽減
信仰に基づいて行動する:信仰の尊重、精神的サポート、必要に応じた他職種連携
価値ある仕事を行い、達成感を得る:趣味活動への参加促し、役割の提供、社会復帰への援助
遊び、あるいは様々な形のレクリエーションに参加する:レクリエーション活動への参加促し、気分転換の援助
学習し、発見し、あるいは好奇心を満たす:疾患や治療の説明、自己学習の援助、情報提供
まとめ:ヘンダーソンで、あなたの看護を「見える化」しよう!
ヘンダーソンの「14の基本的欲求」は、看護実習記録の単なるフォーマットではありません。それは、患者さんを深く理解し、その人らしい生活を支えるための、あなたの**「看護の視点」**そのものです。
初めは難しく感じるかもしれませんが、情報収集、アセスメント、計画、実施、評価の各ステップで、常に14の視点を意識することで、あなたの看護実践がより論理的になり、記録も格段に分かりやすくなります。
このブログで学んだことを活かして、ぜひ自信を持って実習記録に取り組んでください。あなたの丁寧な記録が、患者さんへのより良いケア、そしてあなた自身の看護師としての成長に繋がるはずです。応援しています!